2026.03.09
マラソントレーニングにひと工夫
秋から春にかけて続くフルマラソンシーズンも佳境を迎えています。1月下旬から3月にかけては各地で大規模な大会が開催され、メジャーなレースでは各シューズブランドがブースを構えて新モデルを展開し、ランナーたちで賑わうのが恒例となっています。
レースが終わってSNSを見れば、国内外の主要なロードレースで上位選手がどのメーカーのどのシューズを履いていたか、写真・グラフィックで紹介しているメディアもあります。そこで取り上げられているメーカーの着用率は、市民ランナーのカテゴリでも大きくは変わらないのではないでしょうか。
そうした状況を踏まえたうえで、少し違ったアプローチも考えられるかもしれません。完走を目指す方、速さを求めるランナーにかかわらず、です。今回は“シューズの使い分け”と、平行してできる補強トレーニングについて考えてみたいと思います。

“練習履き”を考える
先日店頭で勤務していると、その日にフルマラソンを走った筆者の友人がお店に来てくれました。ALTRAのシューズに関心があるようだったので、談笑しながら試し履きをして頂きました。初めてのゼロドロップとフットシェイプは、これまで彼が履いてきた靴の履き心地にはない新感覚だったようで、驚いていました。ちなみに、彼のレース当日のシューズはナイキのAlpha Fly 3。無事に自己記録を上回ってサブ3.5でフィニッシュしたとのこと。
ワールドマラソンメジャーズを始めとした国内外の主要なロードレースの後は、いくつかのメディアが上位選手の履いたシューズのメーカーと名称を特定し、写真やグラフィックを用いてSNSで紹介しています。「どの選手がどんな靴を履いたのか」という比較は、もはやおなじみの光景となりました。
ところで、レース用とトレーニング用でシューズを使い分けているランナーは、練習では何を履いているのでしょうか。“練習履き”は大会直後のようにメディアで可視化されることは少ないものの、どのブランドもレースとトレーニングでラインナップを分けていますから、後者を使用している方が多いと考えられます。皇居外周を走りながら、ランナーの足元を注視してみても、その仮説は的外れではないように思います。
イージーランに新たな選択肢
STRIDE LABの店頭でお客様の話を伺っていると、ハイカー、ウォーカーの方、あるいは足部、膝、腰、姿勢に悩みを抱えていて普段履きとして使用するシューズを検討されている方が多くいらっしゃる一方で、ハーフマラソンやフルマラソンに向けてトレーニングを積まれている方の割合は比較的少ないように感じられます。
とはいえ、フルマラソンを最後まで気持ちよく走り切りたいランナーにとっても、自己記録更新を目指すランナーにとっても、例えばALTRAのようなゼロドロップ/フットシェイプシューズと、レースで履くパフォーマンスシューズの使い分けは、中長期的に見て効果の見込める選択肢になるかもしれません。
たとえば、スローな距離走やリカバリーランなどのいわゆる「イージーラン」ではALTRAで走ってみる。また、テンポ走やレペティションといったポイント練習と、レース本番では好みのレース用シューズを使う、といった具合に。
中間的ポジションのALTRAを無理なく導入
重要な点は、ALTRAのロードランニングシューズは、ゼロドロップ(踵とつま先の高低差が無い)と広いつま先部で裸足で立っている感覚に近く、足指を広げて足裏のアーチを機能させやすい形状になっていながらも、クッション性を確保するミッドソールが入っているということです。いわゆる「ベアフット(裸足)シューズ」ではないので、普段のトレーニングに無理なく導入しやすいシューズといえるでしょう。
なぜ導入しやすいかというと、ミッドソールがしっかりと入っているためにランニングフォームがレース時と比べて大きく変わらないと考えられるからです。
例えばソールが薄いベアフットシューズで走ってみると、ストライドが短くなったり、ピッチが細かくなったり、自然とつま先に近い位置で接地するようになったりといった変化を感じることができると思います。一方で、いわゆる厚底シューズでは足裏の中央から踵のあたりでの接地が促され、ドロップ(踵とつま先の高低差)と高いクッション性、内蔵されたカーボンファイバーやナイロン製のプレートで推進力が強化されていきます。
この両極的なコンセプトのシューズでは促されるランニングフォームが大きく異なってくるため、身体の動かし方の一貫性が保ちづらいことも考えられます。ALTRAのシューズは両者の中間的なポジションに位置するので、姿勢や足部の稼働を意識しながらも、フォームを大きく変えることなくトレーニングで使用することができるのではないでしょうか。
まずは4mmドロップから
では、もしALTRAのラインナップからイージーラントレーニングのためのロードシューズを選ぶ場合、どのようなものを選択すればいいのか。
主要なスポーツメーカーのロードランニングシューズのスタックハイト(ソールの厚み)は、つま先が20mm台後半、踵が30mm台後半で、ドロップが10mmのものが多く、最近では40mm台の極厚ソールのシューズも登場し始めています。
ALTRAのラインナップのなかでも、スタックハイトが22mmから24mmのモデルは、厚底でドロップのあるシューズに慣れているランナーが故障を防ぎながらレースまでのトレーニングを継続する上で少しだけ不安があります(もちろんランナーによってフィーリングに差はあるかと思います)ので、30mm前後の厚みのあるモデルを推奨したいところです。
そこで現行モデルから、TORIN8、PARADIGM 8、Experience Flow 3(あるいはExperience Flow ST)、それからFWD VIA 2の計5モデルをピックアップしたいと思います。これらのソールの厚みを整理してみましょう。
TORIN 8:30mm / 30mm(0mmドロップ)
PARADIGM 8:30mm / 30mm(0mmドロップ)
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Experience Flow 3:28mm / 32mm(4mmドロップ)
Experience Flow ST:28mm / 32mm(4mmドロップ)
FWD VIA 2:33mm / 37mm(4mmドロップ)

いずれも20mm台後半から30mm台の厚みがありますので、主要なロードランニングシューズの平均から大きくは離れていません。主観的な感想ですが、筆者自身も、主要メーカーのロードシューズからTORIN 8に履き替えて以降も、走り方に違和感を感じることなくロングランを行うことができています。
ただ、一般的なロードランニングシューズに慣れている方が、今回ピックアップした内の上部2モデルのようなゼロドロップのシューズを履いて走ると、なかにはふくらはぎ周辺に張りを感じる方がいるかもしれません。従来のシューズでは、踵が上がって同部位の筋肉が短縮していたところに、ドロップがなくなることで伸張することが考えられるためです。
そこで、ALTRAのシューズを普段のイージーランに導入する場合は、まずつま先と踵で4mmの高低差があるExperienceシリーズ、もしくはFWD VIA 2のなかから好みの足入れ感のものを選んでもいいでしょう。
快適なランに向けたもうひとつのピース
イージーランではALTRA、ポイント練習とレースではいつものレーシングシューズ。そうした使い分けに加えたいもう一つのピースが、足指のトレーニングです。
先日、足部の運動や学びを通して、足元から再び動ける身体を取り戻すことをサポートする「STRIDE ReMOV」の協力を得て「Toe Strength Challenge」という測定イベントを実施しました。
オーストラリアのVald Performance社の「フォースフレーム」という機器を使用して、円状のパッドに母趾(親指)と短趾(親指以外)をそれぞれ置いて下方に押し込むことで「底屈筋力」を測定し、足の強さを数値化するというイベントです。列ができるほど盛況で、併設された記録ボードが測定結果を記入したシールで埋め尽くされていました。

外反母趾や内反小趾の方を始め、走力にかかわらず足の指をうまく使えていない人が少なくありません。言うなれば、身体が足の指の動かし方を忘れてしまっているような状況です。
機器を使って数値化する以外に、
・足の指でグーパーができるか
・親指だけを上げたり、短趾だけを上げたりできるか
・足裏を接地したまま、内側のアーチ(土踏まず)部分に力を入れることができるか
など確認方法はいくつかありますが、この部位の筋力はバランス感覚や、着地時の衝撃吸収、または地面を踏み込む際に得られる推進力にもダイレクトに影響する重要な筋力です。
科学的な検証は発展途上なので、あくまでも提案という形ではありますが、足指の可動域や筋力が再建・向上されれば、中長期的に、レース用シューズから受けられる恩恵を高めることにもつながるかもしれません。
カーボンプレート入りのレースシューズがランニングのパフォーマンス向上に寄与しうることは、論文などでも検証されています。そういった“走行時の効率を高める靴”と、ALTRAのような“身体の使い方を整える”シューズを使い分けながら、足指まわりの稼働に関するエクササイズを行っていく。長い目でみて、普段のトレーニングに新しい要素を加えてみると、マラソンの完走や自己記録を目指す中で相乗効果を得ることができるかもしれません。
今年度のマラソンシーズンももうすぐ終了しますが、夏を超えた先にふたたび始まるマラソンの季節を見据えて、今からひと工夫というのも良いのではないでしょうか。
STRIDE LAB 吉田
